理事長所信

理事長所信

一般社団法人吉野青年会議所
2024年度理事長
東谷 大輔

一源三流

【(一社)吉野青年会議所について】

(一社)吉野青年会議所は、1972年に創立され、本年度に53年目を迎えます。私たちの先輩方は、この長い歴史の中で、地域を想い、そこに住まう人々を想い、決して錆びることのない情熱を胸に、「明るい豊かな吉野の実現」に向け、様々な運動を展開してこられました。そして、その一つひとつの事業が吉野地域の礎となり、また今日に至るまで、(一社)吉野青年会議所が存続し、変わらず、私たちに成長の機会を与え続けてくれる組織であることに、深い感謝と尊敬を表します。また、(一社)吉野青年会議所の運動に対し、長きに亘りご理解とご協力を賜っております、地域の皆様に対して、厚く御礼を申し上げます。多様に変化していく時代の中で、いついかなるときでも地域の皆様に頼っていただける組織であり続けるよう、メンバー一同、邁進する思いでおります。

本年度、(一社)吉野青年会議所は12名のメンバーで運動をスタートします。これは、私たちのテリトリーである広大な吉野地域を網羅するには、決して多い人数であるとは思いません。現実に、私たちが何らかの事業をする際には必ずと言っていいほど、その事業に賛同いただく方々の協力が、必要不可欠となっているのです。また、私たちは吉野地域で仕事や家庭生活を営むメンバーが大半ですが、吉野地域を隅から隅まで知り尽くしている訳でもありません。未熟な私たちがまず行うべきことは、一人でも多くの地域の方々の元へ足を運び、話に耳を傾け、頭を下げて教えを請う、ということではないでしょうか。

本年度、私は冒頭にある「一源三流」という言葉をスローガンとして掲げました。この言葉の「一源」は誠の精神、「誠実」を意味します。そして、この誠を源にして、血を流すほどに真剣に地域や国を想い、家族のために営々と汗を流し働き、友人の身を想って涙を流す。これが「三流」の意味です。(一社)吉野青年会議所が現在、このような組織背景であるからこそ、私たちは今一度、人間の誠の精神「誠実」を心に宿し、関わる全てに対し、運動を起こさなければならないと、私は考えます。なぜならば、その「誠実」を伝播させることこそが、地域を想うひとをつくり、持続可能なまちをつくる、万古不易の原理であると信じているからです。難しいことではありません。「挨拶をする」、「履物をそろえる」、「約束を守る」ということが基本です。私たちからもう一度、始めましょう。そんなきっかけとなる1年とします。

【組織運営について】

青年会議所には、他の組織よりも圧倒的に秀でているものがあると考えています。それは、「議案書」と「会議体」です。まず、事業の道標である「議案書」については、先輩方から受け継いできたフォーマットがあり、事業の背景、目的、手法、結果検証に至るまで、分かりやすく構成されています。過去資料としても非常に有益で、私たちが手法の方向性に迷ったときは、過去の議案書が必ずその手掛かりを提示してくれます。「会議体」については、総会に始まり、正副会議、理事会、委員会とありますが、そのどれもが規律に則り正確に執り行われます。また、会議の中ではそれぞれが議案に対して真摯に向き合い、事業がより良いものになるよう、意見を重ねます。そして、その意見の中には、発案者の発想にはなかった視点や価値観を含むものもあり、会議を通してお互いに対する理解を深めながら、同時に成長の機会としての役割をも担っています。まずは、これら青年会議所が継承してきた伝統ともいえるものに対し、「誠実」に向き合いましょう。これくらいでいいかな、ではなく、更に一歩先へ思いを巡らせ、それぞれが準備に取り組みましょう。そうすることで、メンバーの一人ひとりが青年会議所に費やす貴重な時間を、より質の高いものへと昇華することにつながります。議案書と会議に「誠実」に向き合うということは、すなわち、メンバーに対して「誠実」に向き合うということと、同義なのです。

【ひとづくりについて】

私はテリトリーである吉野郡川上村で産まれ、学生時代を川上村で過ごしました。大阪で就職をし、20代後半に川上村に帰郷しています。所謂、Uターンです。私がUターンしたきっかけは、何も家業があったからだけではありません。きっかけのひとつに、幼少期から私を理解してくれている地域の方々と接する機会があったからです。私はここで必要とされているんだ、と実感できた瞬間でもありました。私は地域の方々に本当に大切にされて育ってきたのです。
 現代の吉野地域の子どもたちはどうでしょうか。学校教育はあらゆるリスクを避けるような運営へと変化し、地域の方々からも近くの子供たちのことをよく知らないという声が聞かれます。ひとやまちを想うよしのびとの創成は、ひとやまちに対する恩返しが、その根底にあるのではないでしょうか。必要な知識や情報は、様々な媒体から子どもたち自身で得られる環境にある世の中で、私たちが伝えるべきことは、心であると思います。子どもたちのふるさとを想う心と、そこに住まう大切にしてくれた人たちを想う心を育みましょう。そして、君たちは私たちにとって大切な存在なんだよ、ということを心に刻んでもらいましょう。そうすることが、よしのびとを将来に渡って生み出し続ける源泉になると信じています。

【まちづくりについて】

現在の吉野地域には、様々な課題があります。人口減少と少子高齢化、若者の流出と担い手不足、道路の問題、災害への対策、過疎地における医療など、その全てが未来の吉野地域を創る上で、避けては通れないものばかりです。また、それぞれの課題は綿密に絡み合いながらも独自の側面を持ち、課題解決のアプローチについても一様ではありません。そんな中、昨今の新型コロナウィルスによるパンデミックにより、私たちは事業を縮小せざるを得ない時期を経験しました。これによる最大の影響は、私たちが今まで関係を構築してきた地域の方々や各種団体との接点が、希薄となりつつあるという点であると考えています。課題へのアプローチが一様でないのであれば、今こそ地域に集う一人ひとりが関係性を向上させ、お互いを理解し、多様なアイデアを持ち寄り、未来の吉野地域をより良くすることに、取り組む必要があります。これは、私たち青年会議所だけに限った話ではありません。行政をはじめ、商工会や消防団、PTAや老人会においても同様です。それぞれの組織が課題を抱え、足りない部分を対外に求めています。吉野地域における新たなネットワーク構築の旗手として、私たち青年会議所が先頭に立ちましょう。そして、対外に多くの接点を求めるならば、私たち一人ひとりの行いが、青年会議所の組織の評価に直結することを忘れてはいけません。「誠実」に行動しましょう。

【広報について】

「青年会議所は何をしている組織なのか。」これは、私が地域の方々からよく耳にする言葉です。これを聞くたびに、まだまだ私たちの運動は地域に根差せていない部分があるのだなと、自戒の念を抱きながらその言葉を聞いています。しかし一方で、青年会議所の存在自体は、認知いただけているとも受け取れます。私たちはこれからの広報について、どう考えていくべきなのでしょうか。私は、伝えたい情報、ターゲット、媒体を棲み分けることが、最も重要ではないかと考えます。これは組織のマーケティングにおいても、基本となるはずです。伝えたい情報に対し、最も伝えたい相手を想定し、最も目を通すであろう媒体を選定する、こうした意図がなければ、どれだけSNSを投稿しようと、紙媒体を撒こうと、私たちが何をしている組織なのか、正確には伝わりません。伝えたい情報、ターゲット、媒体を明確にし、意図を持って、広報を行いましょう。
そして、私たちの最大の広報の場は、事業です。事業は、私たち自身の言動で想いを伝えることができる、唯一の機会です。私たち一人ひとりが、(一社)吉野青年会議所の広告塔であることを忘れずに、事業に臨みましょう。

【会員拡大について】

青年会議所が様々に変化する時代に対応するためには、数多くの視点や価値観を受け入れながら、組織のあり方を見直し続ける必要があります。また、この組織を次代に継承していくためにも、それを受け継ぐ人材を脈々と迎え入れ続けなければなりません。今の世の中は、社会全体が多様性を認め、個人を尊重する流れへと傾いています。企業において働き方改革が推進されているように、青年会議所においても、係わり方の改革を進める時期にきているのではないでしょうか。そのような時代背景の中で、会員を拡大するためには、入会候補者の思いや価値観をコミュニケーションからくみ取り、私たち自身が今まで以上に候補者に対する理解を深める必要があると考えます。そして、そこから得た候補者のニーズに「誠実」に寄り添うことが重要であり、それこそが変化に対応できる強い組織へとつながるのではないでしょうか。メンバー全員で候補者の情報を共有し、価値を伝えるのも勿論ですが、それ以上に話に耳を傾け、候補者に寄り添った会員拡大を推し進めましょう。

【むすびに】

私は2022年度に(一社)吉野青年会議所に入会しましたが、正直に申し上げると、入会するまでの青年会議所に対する印象は、決して良いものではありませんでした。そして、私たちに対して地域の方々が持つ印象も、決して良いものばかりとは限りません。これは、在籍している全員が悔しく感じているところではないでしょうか。しかし、私は今では(一社)吉野青年会議所に対して大きな誇りを抱いています。それは、入会してからメンバーや先輩方、事務局員の方と接する中で、こんなにも地域や仲間のことを真剣に想い、悩み考え、行動している組織は他にはないと確信したからです。そして、その過程において、沢山の学びや新たな出会いがあり、その一つひとつが必ず、自らの人生にとってかけがえのない財産になるということを実感しています。但し、これはあくまでも私の主観です。厳しいようですが、組織の評価はあくまで対外からの評価が全てです。この評価を覆すことは、地域を想う事業を通して、貢献することでしか成し遂げられません。すぐに結果を求めてはいけません。私たちが目指すものは、将来に渡って、吉野地域が明るく豊かであることです。どんな障壁があろうと、決して諦めず、いついかなるときでも「一源」誠の精神を胸に宿し、「三流」を行いましょう。いくら時代が変わろうと、私たちの意志と行動は、吉野地域を守る礎となり、朽ちることはないのです。
誰よりも強く、誰よりも優しく、地域や家族、仲間を想い行動できる人に、私たちは必ずなれるはずです。この愛する吉野地域を次代へ、共に継承しましょう。